久しぶりになってしまいました。
以前某ドラッグストアへ買い物に行ったときに保安警備らしき人を見ました。
鋭い目つき、商品を手に取っても商品を見ずに明後日の方向をチラチラと気にして見ている様子、什器の陰に隠れるような動き。おそらく誰が見ても普通の客じゃないことが一発でわかるんじゃないかと思います。一応私も保安警備をやってきた一人なので言わせていただくと、あまりにも露骨に保安とわかるような人物がお客さんを監視して店内をうろついているとお客さんから苦情が来ることがあるようなので「一般のお客さんに溶け込むようにできるだけ自然な動きをする」「自然に遠くを見るような目をする」「連れを探しているような感じで人を見る」と言われてきたものですから、あの時見た保安さんはちょっといただけない感じです。
保安警備というのはスーパーとかデパートなんかで主に万引き等の犯罪の発生を警戒して防止する業務のことで、「私服警備員巡回中」とか貼ってあるあれです。
私は警備を離れて数年経つのですが、今でも買い物でスーパーとかへ行ったりした時に「あの人ちょっと変」とか思ってついつい見てしまう妙な習性がなかなか治りません。客として来ているだけなので現認しても後を付いて行ったり声を掛けたりするわけではありませんが、気になって見に行ってしまうというのはなかなか抜けないようです。
さて、保安警備業務は店内での万引きや置き引き等の犯罪や迷惑行為等の発生を警戒して防止することで、店内の安心・安全や秩序の維持を目的とする警備業務ですが、保安警備を依頼するお店側としては万引きによる品減り(損失)をなくすことを最大の目的(というよりもこれが目的)として依頼しているところも多いのではないでしょうか。
ところで、万引きで発生する品減りってどれくらいあるんでしょう。ちょっと古い資料なんですが全警協の保安警備の手引きでは、一般的に一店舗あたりの損失は売上全体の2%程度で、その中で万引きによるものは半分くらいではないかとしています。実際に万引きでどれくらいの損失が発生しているのかなんて、全部を捕まえて商品を回収してみないと正確なことは知りようがありませんし、損失の発生原因は他にもいろいろ考えられます。本当に損失の半分が万引きによるものかどうかは推測の域を出ないものでしょうし、店舗の防犯管理の状況によってもかなり差があるかとも思います。
万引き以外にも損失の原因はいろいろ考えられます。例えば従業員による内部不正ですが、多い店舗はこれだけで相当な金額の損失があると思われますし、食品の廃棄処理が適正に行われていなかったりとか、日用品や雑貨、衣料品なんかだと他店舗へ移動する時の移動処理が行われていなかったりとかもあるでしょうし、検品でのチェックがデタラメだったり、そもそも棚卸をするときの事前の商品整理などの段取りが悪くて棚卸で出てきた数字自体が怪しいこともあるかも知れません。
損失を減らすには万引きを防止するだけではなく、これらの損失の原因を総合的に検討して対策を取っていかなければなかなか減らないものと思われます。
保安警備を一人くらい入れたからって防止できる損失は知れています。それよりも店舗全体の防犯意識やモラルを高めて「万引きしにくい店」「内部不正できない店」にしていくことが有効かと思います。そのためには従業員に防犯教育などを行って一人一人の防犯意識を高めてもらうことが不可欠です。
従業員に防犯教育を実施したいとお考えのお店や、防犯体制の状況確認や不正防止対策のほか、警備会社へ依頼するのではなく店従業員による万引きの警戒と回収(自家警備)をしようとお考えでしたら、従業員への教育や研修を行うことが必要です。保安警備と従業員への防犯教育の経験と実績のある当事務所へぜひどうぞ。
防犯マニュアルや教育資料作成だけでもどうぞ。
といっても、決して自家警備での万引きの警戒を勧めている訳ではありません。保安警備は一歩間違えれば人権問題に直結するものであり、適正に行われないと人権を侵害することになりかねないものです。従業員に監視の仕方とかのマニュアルを渡して「万引きを捕まえてこい」と言って送り出すだけでは重大な問題を起こしかねない業務です。店舗全体や社内でこれらの指導や教育を継続して行える体制を作る必要があるでしょうし、万一誤認などの事故が発生した場合に適切に対応できる組織なり体制を作っておくことも必要でしょう。これは現在常駐警備をやっていて、新規に保安警備業務を受注しようと考えている警備会社でも同じことかと思います。
保安警備は施設警備の中でも特殊な業務です。始めるにあたっては何よりも適切に業務を行える体制作りが必要ではないかと思います。