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  • 執筆者の写真行政書士 平野雅啓

【許認可申請】異業種から新規に警備業を始める申請要件

行政書士事務所オフィスMです。


様々な分野での安全対策強化・防犯・セキュリティの向上が求められるようになってきている現在、行政や社会からの警備業に対する期待が高まっていることはご承知のとおりです。今後も警備業が果たす役割はますます大きくなって行き、警備業に対する需要が増加していくことが見込まれていると言われていますので「新規に警備業を始めてみよう」と検討している事業者さんもいらっしゃるかのではないかと思いますが、警備業は誰でも営むことができるものではなく、新規に警備業を始めるためには公安委員会の認定を受けなければなりません。認定を受けずに警備業を営むと「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という罰則が規定されています。

当事務所は開業当初から警備業を専門的にサポート可能な行政書士事務所として警備業認定申請の他、警備業サポート業務を承っておりますが、今回は「新規に警備業を始めたい」と検討されている事業者さんのための警備業認定申請に必要な申請と資格ついて記載していますので、警備業を始めようと検討している事業者さんは参考にしていただければと思います。


警備業について

警備業は「警備業法」という法律で規制されています。警備業法でいう「警備業」とは「警備業務を行う営業をいう」と規定されており「警備業務」とは「他人の需要に応じて行う」次の一から四の業務と定義されています。


 事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務

→1号業務:施設警備・保安警備

 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務

→2号業務:交通誘導・雑踏警備

 運搬中の現金、貴金属、美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務

→3号業務:現金輸送・美術品等の輸送、核燃料輸送

 人の身体に対する危害の発生を、その身辺において警戒し、防止する業務

→4号業務:身辺警護・ボディーガード、緊急通報サービス


※「機械警備業務」は警備業務用機械装置を使用して行う一号警備業務です


他人の依頼を受けてこれらの業務を行うことは警備業法上の「警備業」に該当するので公安委員会の認定を受けなければなりませんが、例えばデパートやスーパーで自店の従業員を保安業務にあたらせる場合や、倉庫業者が自社の倉庫の盗難等の警戒に自社の従業員を使う場合、工事業者が自社の施工している工事現場で自社の作業員に必要な範囲で交通誘導を行わせる場合は、他人の依頼によらないので警備業務に該当しないことになりますので、公安委員会の認定は必要なく警備業法の規制も受けないことになります。


警備業認定申請の要件

一般的に許認可申請では「人」「物」「金」の要件が定められています。定められた要件を満たしていなければ許可されませんが、警備業の場合は警備業法で以下の要件が定められています。


1.人の要件

(1)警備業を営んではならない要件に該当しないこと

警備業の認定を受けるにあたっては、法人であれば役員全員、個人であれば個人事業主と、選任する警備員指導教育責任者が以下の欠格要件に該当しないことが求められています。

警備員指導教育責任者は法人であれば役員、個人事業主であれば事業主が資格者であれば選任できます。個人事業の場合は事業主本人が警備員指導教育責任者資格を取得しているから警備業の起業を検討する場合がほとんどではないでしょうか。

(警備業の要件)

第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。

 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者

 最近五年間に、この法律の規定、この法律に基づく命令の規定若しくは処分に違反し、又は警備業務に関し他の法令の規定に違反する重大な不正行為で国家公安委員会規則で定めるものをした者

 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者

 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第十二条若しくは第十二条の六の規定による命令又は同法第十二条の四第二項の規定による指示を受けた者であつて、当該命令又は指示を受けた日から起算して三年を経過しないもの

 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者

 心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの

 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が警備業者の相続人であつて、その法定代理人が前各号及び第十号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。

 営業所ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分(前条第一項各号の警備業務の区分をいう。以下同じ。)ごとに第二十二条第一項の警備員指導教育責任者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者

 法人でその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)のうちに第一号から第七号までのいずれかに該当する者があるもの

十一 第四号に該当する者が出資、融資、取引その他の関係を通じてその事業活動に支配的な影響力を有する者


上記の一から十一のどれか一つでも該当する場合は警備業の認定を受けることはできません。


(2)資格者(警備員指導教育責任者)

上の欠格要件(九の要件)にも記載がありますが、営業所ごとに取り扱う警備業の区分ごとに警備員指導教育責任者を選任しなければなりません。

警備業法第22条でもこのように規定しています。


(警備員指導教育責任者)

第二十二条 警備業者は、営業所(警備員の属しないものを除く。)ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分ごとに、警備員の指導及び教育に関する計画を作成し、その計画に基づき警備員を指導し、及び教育する業務で内閣府令で定めるものを行う警備員指導教育責任者を、次項の警備員指導教育責任者資格者証の交付を受けている者のうちから、選任しなければならない。ただし、当該営業所の警備員指導教育責任者として選任した者が欠けるに至つたときは、その日から十四日間は、警備員指導教育責任者を選任しておかなくてもよい。


この「警備員指導教育責任者」は、防火管理者や食品衛生責任者のように誰でも講習を受けられてすぐにもらえる資格ではありません。なので「とりあえず総務部長に講習を受けてもらって」という感じで誰でもできるものではないことに注意が必要です。


警備員指導教育責任者になるためには、公安委員会が行う「警備員指導教育責任者講習」を受講して最後に行われる試験に合格しなければなりませんが、この「警備員指導教育責任者講習」を受講するためには受講しようとする区分の警備業務従事経験が最近5年以内に3年以上ある人」か「受講しようとする区分の警備業務検定1級の合格者」、「受講しようとする区分の警備業務検定2級に合格後、1年以上継続して当該警備業務に従事していて、現在警備員である人という要件があるので、警備業と全く関係のない業種、例えば建設業者や運送事業者が新規に警備業認定申請を受けようとする場合は、すでに社内に資格を持っている人がいる場合を除いて、申請しようとしている区分の警備員指導教育責任者資格を持っている人を新たに採用するか、最近5年以内に3年以上の警備業務経験がある人を採用する、又は警備業務検定1級の合格者を採用して警備員指導教育責任者講習を受講してもらい修了試験に合格した上で、資格者証を取得してもらってから申請する必要があります。

講習を受講するためにも要件があるので「とりあえず総務部長に講習を受けてもらう」というわけにはいかないのです。

そうなると「それじゃ、知り合いがやっている警備会社の警備員指導教育責任者に、うちの指導教育責任者も兼任してもらえるように頼めば良いのではないか」と考えたくなりますが、警察庁が出している「警備業法等の解釈運用基準について(通達)」は次のように規定しています。


第9号関係

(1) 法第3条第9号該当の有無については、原則として、警備員指導教育責任者(以 下「指導教育責任者」という。)として選任しようとする者に係る警備員指導教 育責任者資格者証(以下「指導教育責任者資格者証」という。)の写し等(府令第 4条第1項第3号)による書面審査により判断すること。この場合において、法 第22条第7項各号のいずれかに該当するか否かを添付書類等により確認するこ と。

(2) 警備業を営もうとする者は、認定を受けて営業を始めようとする時点において、 指導教育責任者を選任していなければならない。法第3条第9号に該当する場合 とは、認定をするか否かの判断をする時点で、指導教育責任者として選任しよう とする者を具体的に決めていない場合や選任しようとする者が当該営業所に勤務 することが到底期待できない場合などである。


指導教育責任者(法第22条関係)

2 府令の定め

(1) 府令第39条第1項中「営業所ごと(略)に、専任」とは、その営業所に常勤 して指導教育責任者の業務に従事し得る状態にあることをいう。したがって、他 の営業所と掛け持ちしている場合、他に職業を持っていて通常の営業時間にその 営業所に勤務できない状態にある場合等は、専任とはいえないが、指導教育責任 者の業務のみに専従することまで必要とするものではなく、指導教育責任者の業務に支障のない範囲で、警備業務に従事したり、当該営業所の他の業務に従事し たりするものであってもよい。


「選任」する警備員指導教育責任者は原則としてその営業所に常勤する「専任」でなければなりません。

認定申請書には指導教育責任者資格者証の写しの他に、選任する指導教育責任者の履歴書を添付しなければなりません。他の警備会社の指導教育責任者に専任されているということは履歴書に「○○警備」に在職中だったり役員に就任しているということが記載されているはずですから、履歴書の記載から「専任とはいえない」と判断されて別な人を選任するよう指示されるか、何も無くいきなり不認定通知を受けることになるか、仮に無事認定を貰ったとしても、後で何かしらの指導や指示を受けることになるのではないかと考えられます。

また、認定申請の申請書類や履歴書を含む添付書類に虚偽の記載をして提出した者は30万円以下の罰金刑が科される旨が警備業法第58条に規定されていますので、他の警備会社に在職していることを故意に隠した履歴書を提出した場合はこれに該当する可能性があるだけでなく、第59条では行為者を罰するだけでなく申請をした法人・個人事業主にも罰金刑を科す旨が規定されています。警備業法の定めに違反して罰金刑になると欠格事由に該当しますので、5年間は警備業の認定を受けたり、警備員になることができなくなります。


警備員指導教育責任者資格の取得は一定の警備業の経験が必要なので、警備業と関係がない異業種から警備業への新規参入を検討する場合は、警備員指導教育責任者の資格者をどのように確保するのかが一番の問題になると考えられます。


2.物の要件

営業所

警備業認定申請書には営業所の名称と所在地を記載しなければなりませんので営業所が存在しなければならないことになりますが、警備業の場合は営業所に備えなければならない設備や営業所の規模について規定がありませんし、建設業許可申請のように営業所の写真を添付する必要もありませんので自宅を営業所とすることも可能ですが、営業所には認定証の掲示義務があるほか警備業法で定められた書類を備え付けなければなりません。備付け書類を電子保存する場合はパソコンに保存できるので書類の保管場所を節約できますが、警備員として採用した方に提出してもらった書類は原本を保管しておく方が望ましいでしょうから、これらを保管する書庫等が必要ですし、営業活動に必要な机やパソコン、プリンター、電話、FAX(今どきFAXを使う業者がいるかは不明ですが)を備えたり、警備員の教育を行う場所も必要になります。年に一度の警察の立ち入りにも対応しなければなりません。事務所を借りないまでも、自宅の一部屋を事務所として確保するくらいは必要だと思われます。


ちなみに「警備業法等の解釈運用基準について(通達)」では営業所について


「営業所」とは、本店、支店、支社、事業所等と呼ばれているもので、営業の 拠点となるものをいう。 営業の拠点とは、所属している警備員に対する日常の配置運用又は日常の業務の指揮統轄が行われている場所をいい、その規模の大小を問わない。


とされています。


3.金の要件

警備業認定申請に関して金銭的な要件はありませんが「正当な事由がないのに、認定を受けてから六月以内に営業を開始せず、又は引き続き六月以上営業を休止し、現に営業を営んでいない」状態では認定を取り消される場合があります。「とりあえず認定を受けて営業開始は資金が貯まってから」とか「想定以上にお金が必要で資金が足りなくなって営業できない」「見込んでいたより仕事が来ない」といった「思い違い」「見込み違い」で営業していない状態は「正当な事由」として認められません。

なお、実際に警備業務を行っていない場合であっても、いつでも警備業務を行えるように警備員の教育を実施しておき、入札に参加したり会社回り等の営業活動を継続して行っているような場合は別なので、金銭的要件が定められていなくても、最低限事業が軌道に乗るまでに見込まれる人件費や必要経費等は確保しておいてから申請する必要があります。


認定を受けたあと

警備業認定申請の標準処理期間は40日とされていますので、待っている間に警備業法で定められている営業所に備え付けなければならない書類を準備しておきましょう。

無事に認定通知を受けたら警備業務を始める用意をします。


(1)警備員教育

無事に公安委員会の認定を受けられたらすぐにでも警備員を現場に送って警備業務を始めたいところですが、警備業法で定められた20時間以上の警備員教育(新任警備員教育)を行わなければ警備員を現場へ出すことはできません(教育免除の資格者を除く)。

認定申請の結果を待つ間に教育を終わらせればよいのではないか?」と考える事業者さんもいらっしゃると思いますが、「公安委員会の認定を受ける前は警備業法上の警備業者に該当しないので、認定を受ける前に行った教育は警備業法で定められた警備員教育に該当しない」というのが公安委員会の考え方です。なので、認定を受ける前に警備員教育を行っても警備業法で定められた教育を実施したと扱われません。

また、現に警備業務に従事させている警備員には、年度ごとに10時間以上の現任警備員教育を行わなければなりません。


(2)服装、護身用具の届出

警備業務を行う前日までに、公安委員会へ服装や護身用具の届出を行う必要があります。実際には書類の不備等で届け出が受理されないことがあったりします。警備員を現場に出す前日に届け出たのでは間に合わない場合がありますから、実際に警備業を開始する日よりも前に余裕をもって届け出る必要があるでしょう。


(3)警察の立ち入り検査

警備業は毎年1回、警察による立ち入りがあります。定められた書類が備え付けられているか、警備員教育を行っているか等が確認されます。


(4)更新

認定証の有効期間は5年なので、有効期間満了後も警備業を営もうとする場合は更新申請をしなければなりません。


おわりに

警備業認定申請は一見すると申請要件がそれほど高くないように思われますが、警備業と全く関わりがない異業種から新規参入しようとする場合は「警備員指導教育責任者」の確保が一番のネックになると思われます。

これまで当事務所でお受けした新規警備業認定申請のご相談でも、要件を確認すると警備員指導教育責任者の要件を満たせない事業者さんがいらっしゃいました。

警備業と全く関係がない異業種から新規で警備業に参入しようとお考えの場合には、まず「警備員指導教育責任者」をどのように確保するかを検討する必要があります。


当事務所の新規警備業認定申請は、警備業法で定められている備え付け書類の書式作成や認定を受けた後の服装等の届出まで含まれているところが、認定申請の書類作成と申請代理のみの行政書士事務所が扱っている警備業認定申請業務との違いです。

北海道内で新規警備業認定申請をご検討中の事業者様はぜひ当事務所へお問い合わせください。お問い合わせはホームページの「メールで問い合わせボタン」又は「お問い合わせフォーム」からぜひどうぞ。




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