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  • 執筆者の写真行政書士 平野雅啓

自動車運転代行業の申請で必要な「安全運転管理者」

行政書士事務所オフィスMです。


2023年10月頃のことですが、自動車運転代行業の申請要件についてご相談をお受けしたときのことです。

自動車運転代行業を始めるためには、自動車運転代行業を営むことができない者(欠格事由)のいずれにも該当しないことについて公安委員会の認定を受けなければなりません。

 

自動車運転代行業を営むことができない者(欠格事由)


1.破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、

2.禁錮以上の刑に処せられ、又は自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の規定により、若しくは道路運送法の所定の規定(自家用自動車有償運送禁止違反等)、若しくは、道路交通法の所定の規定(酒酔い・無免許運転等の下命・容認禁止違反等)に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して2年を経過しない者

3.最近2年間に、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の規定による次の命令に違反する行為をした者。

 ア 公安委員会による営業停止命令

 イ 公安委員会による営業廃止命令

 ウ 処分移送通知書の送付を受けた公安委員会による営業停止、営業廃止命令

4.集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で、国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者

5.心身の故障により、自動車運転代行業の業務を適正に実施することができない者として国家公安委員会規則で定めるもの

6.営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が自動車運転代行業者の相続人であって、その法定代理人が1から5及び9のいずれにも該当しない場合を除く

7.代行運転自動車の運行により生じた利用者その他の者の生命、身体又は財産の損害を賠償するための措置が、国土交通省令で定める基準に適合すると認められないことについて相当な理由がある者

8.安全運転管理者、副安全運転管理者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者

9.法人でその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役、又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)のうちに1から5までのいずれかに該当する者があるもの

 

1~5は、自己破産したりとか、これまで警察のお世話になったとか、反社会的な方々と関係があるとかいうことがなければあまり該当する方はいないのではないかと思います。


6→残念ながら未成年者はダメです。


7は、

・対人 8,000万円以上

・対物 200万円以上

・代行運転車両保険 200万円以上

の任意保険(代行共済・代行保険)に入ることが必要です。


9は法人の役員に1〜5に該当する人がいるとダメです。


8が今回のタイトルになっている「安全運転管理者」に関する部分です。この安全運転管理者を選任できなければ欠格要件に該当することになります。


「安全運転管理者って何?」という方もいらっしゃるかも知れませんが、安全運転管理者は道路交通法第74条の3で規定されているもので、法人・個人問わず事業者は、乗車定員11人以上の自動車は1台以上、その他の自動車は5台以上を使用している使用の本拠ごとに安全運転管理者をして選任して、選任した日から15日以内に使用の本拠を管轄する公安委員会に届け出なければならないことになっています。

自動車運転代行業では車両の台数に関係なく安全運転管理者を選任できなければ欠格事由に該当しますので、運転代行業の申請を検討する場合は安全運転管理者を選任できることが必須条件になります。

この「安全運転管理者」ですが、なれる人には一定の要件が定められていますので「とりあえず総務部長で」という感じで適当に選任して良いものではなさそうな感じです。


安全運転管理者の要件

安全運転管理者は20歳以上(副安全運転管理者を選任する場合は30歳以上)であることに加えて、

1.自動車の運転の管理に関し2年(自動車の運転管理に関し公安委員会が行う教習を修了した者にあっては、1年)以上実務経験を有する者

2.自動車の運転の管理に関しこれらの者と同等以上の能力を有すると公安委員会が認定した者

という要件が定められています。

北海道の「安全運転管理者に関する届出書」の資格要件を記載する欄には「1実務経験 運転管理2年以上」「2公安委員会教習終了 運転管理1年以上」「3公安委員会の認定」とありますので、3つのうちどれかの資格要件に該当していなければならないようです。


今回のご相談では、起業して1年半くらいなので、現在の事業歴だけでは運転管理の実務経験が2年以上あることを主張できません。そこで前職の経験年数との通算で2年以上の運転管理経験にしようかと思いましたが、話を聞くと前職では運転管理の実務経験はないようなので、現状ではあと半年くらい待たなければ最初の要件を満たせなさそうです。

公安委員会の教習を終了すれば1年以上の運転管理実務経験で要件を満たしますが、教習を受けるのはパスです。

ということで「事業の代表者で管理・監督・指導できる立場である」という理由で公安委員会の資格認定を申請して安全運転管理者に選任する方法を検討することにしましたが、北海道警察のホームページのどこを探しても公安委員会の認定を受けるための申請書は見当たりません。そこで北海道公安委員会の道路交通法施行細則を確認したところ、第17条に安全運転管理者の認定を受けるための手続きと申請書の様式が規定されているのですが、肝心の別記様式がすべて省略されていて申請書を入手することができません。その後も色々と調べてみましたがこれ以上は何も出てきませんでしたので、最終手段で管轄の旭川東警察署に行って窓口で直に確認することにしました。


旭川東警察署の交通課窓口で担当者に事情を説明してこちらで調べた資料を見せ、安全運転管理者の資格について公安委員会の認定を受けるために「道路交通法施行細則(北海道公安委員会規則第11号)」の第17条に規定されている「安全運 転管理者・副安全運転管理者資格認定申請書(別記様式第20号)」を出して欲しい旨を伝えましたが「そんなものは見たことがない」という答えが返ってきました。部屋の奥にいる上司らしき人にも聞きに行ったようですがその場では回答できないらしく、結局は道警本部へ問い合わせをするので座ってしばらく待つようにと指示されたので待つことにします。

しばらく待っていると、対応してくれた警察官が来て道警本部からの回答を教えてくれました。

それによると「北海道警察では安全運転管理者についての公安委員会の教習も、公安委員会の資格認定も行っていない」とのこと。やってもいないのになんで届出書に書いてあるのか謎です。

そこで「今回のように運転管理の実務経験の要件を満たす経歴を主張できないようなケースではどのように対応すれば良いでしょうか?」と訊ねると大体の方は仕事で車を使うことがあると思うので、運転管理の実務経験ではなくて業務で車を使っていた経歴を記載してもらって、総合的に判断することになりますということでした。

つまるところ、運転の管理の実務経験がなくても、業務で車を使っていた経歴を記載してもらえれば良いとのことで、複数の職歴がある場合はそれぞれの職で車を使っていたことを書けば良いとのこと。例えば職歴が2つある場合で取引先へ行くのに車を使っていたのであれば、株式会社○○では〇年〇月から〇年〇月まで、次の職である□□株式会社では△年△月から□年□月までというように経歴を記載して出せば良いということのようです。


ところでこの安全運転管理者制度ですが、実は安全運転管理者を選任しなければならない台数の車両を使っているのに、知らないで選任していない会社が結構あるのかも知れません。

私が以前勤めていた会社では、私が所属していた営業所だけで社有車7~8台を社員に貸与して業務に使っていましたが、安全運転管理者を選任しているという話は聞いたことがありません。というよりも私が車両管理を前任者から引き継いだのですが、そのような話は聞いていませんし、当時の私はそんな制度があること自体を知りませんでした。


安全運転管理者を選任しなければならないのに未選任だと50万円以下の罰金が規定されていますし、令和5年12月から運転者に対して運転前後のアルコール検知器での酒気帯びの確認と記録の作成・保存が安全運転管理者の義務になりましたので、選任しなければならない事業所に該当するのにまだ届出ていない事業者さんは早めに届出をしたほうが良さそうです。


安全運転管理者制度や届出についての詳しい情報は北海道警察のホームページをご確認下さい。

↓↓↓



北海道では安全運転管理者の選任について、運転管理の実務経験の要件に関してそれほど難しく考える必要はなさそうですが、他の都府県公安委員会では取り扱いが違う場合があるかと思いますので、必ずご自身でご確認下さいますようお願いします。


行政書士事務所オフィスMでは自動車運転代行業の他にも各種許認可申請に関する業務を承っております。お問い合わせはホームページからぜひどうぞ。


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