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  • 執筆者の写真行政書士 平野雅啓

遺言書の内容

「遺言書を書いてみたんだけど、内容とかどうかと思って」と「遺言書」と書かれた封筒から取り出して見せていただいた遺言書には、筆ペンで書いた文字でこんな内容の事が書いてありました。



「私、〇〇〇〇は、二人の子供に次のようにお願いします。


1.土地、建物

この先、私の世話をしてくれたり面倒を見てくれる子供にお願いします。


2.現金、預貯金

亡き配偶者と私の供養をしていってくれる子供に三分の二。


3.胃婁は望みません。延命治療も希望しません。」



全文がご本人の自筆で、作成した日付と署名・押印があり、自筆証書遺言の形になっていました。

この遺言書、気持ちはわかります。言いたいこともよくわかります。

ですが、この遺言書で亡くなった後にご本人の意思を実現できるかどうかとなると微妙です。


まず、3.の延命治療の件ですが、遺言書に書かれたことが実現されるのは遺言者が亡くなってからなので、遺言書に胃婁とか延命治療についての希望が書いてあっても意味がありません。ご存命中の医療に関する希望はエンディングノートに書いておくか、元気なうちに自分の希望を家族や親族に伝えておく必要があるでしょう。

できれば家族や親族に直接自分の希望を伝えて、さらに「エンディングノートにも書いてあるから、私が病気になったりした時にはエンディングノートを見てね」と言っておくのがよろしいかと思います。エンディングノートを書いているのであれば保管場所も伝えておきましょう。


1.についてですが、世話をしたり面倒を見る子供は二人のうちのどちらなんでしょう?このような書き方は、本当に仲の良い兄弟姉妹なら問題ないかもしれませんが、そうでなければ争いの種になりそうな気がするのは私だけでしょうか?「俺が面倒を見てきたんだ」「私だっていろいろとお世話してきた」「たまに来ていただけで大したことしてこなかったくせに」「偉そうなこと言って、お前だってイヤイヤやっていたじゃないか」なんてことになってしまわないでしょうか。もしかしたら二人とも面倒見るのは「出来ない」とか「イヤ」だっていう可能性もありますし。

それに「土地」「建物」と書いてあってもどこの土地か建物か特定できませんし、「お願いします」というのは何をお願いするのかがわかりません。もし争いになってしまったとき「相続させる」ということにはならない可能性があります。


2.についても、供養をしていってくれる子供さんは二人のうちのどちらなんでしょう?供養とかについて話し合いをして誰が供養を続けていくのか決まっているなら良いのですが、そうでなければこちらも喧嘩の原因になる可能性があります。供養を続けていくのも結構大変なことのようですから、「供養を続けるのは無理」とか言われちゃう可能性もあります。やはり事前に話をしておく必要があるのではないでしょうか。


というわけでいろいろお話を伺ってみたところ、子供さんは二人とも遠く離れて暮らしていて、そのうちの一人は普段困ったりしたときに連絡をすると遠くから来てくれていろいろとやってくれているということで、ご自身としてはこちらの子供さんに多く相続させたい気持ちがあるようでした。

また、そう遠くないうちにお亡くなりになった配偶者様の七回忌があり、みんなで集まる機会があるということ。


ということで今回のご相談では、


・まず七回忌で全員が集まった時に相続について考えていることをきちんと話して、自分の考えを伝えておく。ご自身のこの先のお世話とか供養とかについてもそこで誰がどうするのか、自分の希望も伝えながらある程度確認しておくのがよろしいかと思います。


・相続人に相続させたい場合は「お願いします」とかではなくて「〇〇に相続させる」と書く。


・土地・建物についても法務局で登記事項証明書をもらってきて記載の通りに書く。


・延命治療についての希望はエンディングノートに書き、七回忌の時にも直接伝えておくのがよろしいかと思います。


・遺言書には付言事項として、子供さんに対する感謝の気持ちと相続に差をつけたのは自分が熟考した結果決めたことであること、いつまでも仲良くして欲しいという思いを伝える。


以上のことをザックリとお伝えして「まず七回忌の機会にみんなでお話してからもう一度考えて作成してみてはいかがでしょうか」とアドバイスをさせていただきました。


ご自分の相続についてのご相談はよくあるので、ご自分が亡くなった後の相続について関心のある方、心配している方は多いのではないかと思います。

しかし関心はあっても実際に遺言書を作っている方はそう多くはないようで、遺言書を作っておくようアドバイスをしています。遺言書は作ってみたけど、この方のように実際に作った遺言書の内容を確認してみようと思って相談に来られる方は更に少ないのかも知れません。


今回ご相談に来られた方は「みんなで話し合いをしてからまた相談に来ます」と言ってお帰りになりました。


相続についてお考えの方、遺言書の内容を確認してみたい方はぜひ一度ご相談下さい。


当事務所でも相続、遺言書作成についてのご相談、遺言書の作成支援業務、エンディングノートを使った終活サポートも承っています。

お問い合わせはホームページからお気軽にどうぞ。




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